「外来生物」ってなあに?

 

 私たちの身のまわりには、植物もふくめて、たくさんの生きものがいます。

多くの生きものはその環境が好きでそこにすみついています。

 

その中には、ヒトによって運ばれてきた生きものもいます。

それらの生きものを「外来生物」と言います。外来生物は「外国産の生きもの」だけではありません。

 

国内の生きものであっても、本来の生息地からヒトによって移動させられたものはすべて、外来生物です。

 そして、あなたが大切にしているペットも、屋外に放たれれば、その地域の自然を脅かす、外来生物になってしまうかもしれません。

 

 

Q1.なんで生きものを移動させちゃいけないの? 

 

Q2.身近な外来生物アメリカザリガニ。いると、なにがダメなの?

 

Q3.生きものを捕まえたけど放したい。捕まえた場所から100mくらい離れてるけど、その程度なら問題ないよね?

 

Q4.ペットや園芸植物、我が家は「本来のすみか」じゃないけど、飼っちゃいけないの?

 

 

 

 

 

Q1.なんで、生きものを移動させちゃいけないの?

 

A.移動先の自然で、その生きものがどんな影響を及ぼすか、わからないからです。

 

 

生きものはその地域ごとにお互いに関わり合い、バランスが取れるよう、途方もない時間をかけて関係を調整し合いながら生きています。ヒトには見えづらい「超・絶妙な関係性」です。これは、有名な自然がある場所だけでなく、皆さんのとなりにある自然でも同じです。

 

そんな世界で、ヒトの都合で生きものを移動させたらどうなるでしょう?

 

まず、ヒトに飼われていた生きものの場合、多くは野外で生きていくことが難しく、時間が経たないうちに死んでしまいます。野生の生きものであっても、その地域の生きもの同士で関係調整ができず、ほとんどが死んでしまいます。

 一方、なんとか生き抜いた生きものは、自分が生きていくため、その地域に生息する生きもののすみかを奪い始めます。すると、その地域にもとからいた生きものは、ヒトの都合で移動されてきた生きものと関係の調整ができないまま、極端に数が減ってしまったり、最悪の場合、絶滅したりしてしまいます。

ヒトによって移動させられた生きものが、将来的にその地域でどんな影響を及ぼすのかは、わからない部分がたくさんあります。だからこそ、「この生きものは外来生物なのか在来生物なのか」と考えるよりも、「これ以上、ヒトの都合で生きものを移動させないように行動する」ことが大切です。

 

 

 

 

Q2.身近な外来生物アメリカザリガニ。いると、なにがダメなの?

 

A.地域の多様な生きものがすみづらくなり、ザリガニだらけの水辺になってしまいます。

 

 

ヒトが生きものを移動させるとどんなことが起きるか、アメリカザリガニを例に考えてみましょう。

アメリカザリガニは北アメリカ南部のミシシッピ川流域に生息する生きものです。日本にはヒトによって1927年に持ち込まれ、アメリカザリガニ自身が逃げたり、ヒトが各地に放したりして日本中の水辺にすみつくようになりました。

アメリカザリガニは侵入した水辺のトンボの幼虫(ヤゴ)やメダカなどの小さな生きものを食べるだけでなく、その地域に生えている水草も食べてしまいます。すると、水草を産卵場所にしている何種ものトンボが産卵できなくなったり、水草を隠れ家にする小さな魚や昆虫の数が減ったりします。さらに、そういった魚や昆虫を食物にする鳥もいなくなり、アメリカザリガニしかすめない、アメリカザリガニだらけの水辺になる、ということが実際に起きています。こういった状況が続けば、地域の生きものの絶滅が多発することにもつながりかねません。

ただし、この問題は、アメリカザリガニによって起きたわけではありません。ヒトの都合で「生きものを移動させたこと」によって起きた問題です。実際、アメリカザリガニ本来のすみかでは、アメリカザリガニも地域の生きものの一員として、自然を脅かすことなく生きています。

 

 

 

 

 

Q3.生きものを捕まえたけど放したい。捕まえた場所から100mくらい離れてるけど、その程度なら問題ないよね?

 

A.「捕まえたその場所で放す」を守りましょう。

 

 

それぞれの生きものは、地形や気候など、「生きもの自身にしかわからない基準と判断」によってその場所にいて、生きもの同士で関係を調整しながら各地域の自然を作っています。もし、ヒトが生きものを捕まえ、放す場合には「捕まえた場所で放す」が基本です。ほんの100mであっても、ヒトの基準や判断で生きものを移動させるのはやめましょう。

飼っている生きものを、「飼えなくなってしまったから生きて欲しくて外に放した」「同じ仲間がいる場所が、生きものにとってもよいだろう」と本来生きていた場所から移動させて放すと、たとえ善意でやったとしても、その地域の自然を壊すことにつながりかねません。ヒトから見て、見た目は同じ種のように見えても、その種の「地域固有の遺伝子」を消してしまう可能性もあります。

だからこそ、「生きものを放すなら捕まえたその場所で放す」を守ることが大切です。また、飼育している生きものは、その命が最後を迎えるまで一緒に過ごす&逃がさないことが、地域の自然を守ることにもつながります。

 

 

 

 

Q4.ペットや園芸植物、我が家は「本来のすみか」じゃないけど、飼っちゃいけないの?

 

A. 大切に、最後まで飼えればOKです。

 

 

 ペットや園芸植物も、みなさんの大切なパートナーです。法律で飼うことが禁止されている生きものでなければ、問題はありません。

大切なのは、ペットや園芸植物を善意であっても野外に放さないことと、逃げ出さないように責任をもってお世話をすることです。「最後までいっしょ、逃げないようにお世話する。」をキーワードに、ペットや園芸植物との暮らしを楽しみましょう。