さいたまの自然環境

さいたま市には、山がなく、他の都市に比べるととても平らなところです。

 

西の端には荒川、東には元荒川が流れ、その周辺には低地が広がっています。また、大宮台地の南端にあり、浅い谷が入り組み、高低差は少ないながらも、複雑な地形をしています。

 

大河川沿いの低地や、浅い谷の底は、縄文海進期の頃は海でした。このため、市内の台地の縁には、多くの貝塚などの遺跡が残っています。

やがて海が後退すると、低地を中心に稲作が始まりました。西区の三条町などに条里制の遺構が残っていることから、1300年以上にわたり、絶えることなく稲作が続けられています。

 

こうした地域性からも、さいたま市の自然環境は、農の営みと共に生きものと共生してきた、農村型の自然環境=里山だと言えます。

 

 

 

農村型の自然環境とは、どんな環境でしょうか?

 

例えば、尾瀬ヶ原、白神山地、釧路湿原、屋久島などは、人の手がほとんど入っていない、手つかずの自然=原生自然と言います。

 

一方で、日本の多くの地域は、人々が雑木林で柴刈りをし、木を切って薪や炭にし、落ち葉を掃いて堆肥を作り、堆肥を田んぼや畑に蒔いて農作物を収穫する、といった生活を送っていました。こうした営みは、一見、人間の利己的な行為のようにも見えますが、化石燃料を大量に消費する現代と比べ、その世代で成長したものを資源として使い、持続的に人々が生活することができる、とても環境負荷の低い生活でした。

 

そしてなにより、実は、その営みにあわせて、草木などの植物や昆虫、動物や魚、野鳥や貝類などなど、実に多種多様な生きものが暮らしてきました。その生きものの種類や数は、原生自然よりもずっと多様で多い、と言われています。

 

こうした生物多様性の保全と持続可能な利用の両立する農村型の自然環境の在り方は、2010年に名古屋で開催された生物多様性条約締約国会議において「satoyamaイニシアチブ」として宣言され、概念や取り組みが日本から世界に拡がっています。

 

さいたま市内では、見沼田んぼ、荒川の堤外地、西区の北部、元荒川沿いなどに、今も里山の名残が見られます。特に、見沼田んぼはさいたま市のシンボル的な緑地空間として位置づけられています。

 

一方で、こうした地域でも、里山の自然環境は大きく減少しています。その原因は大きく、2つあります。

 

一つは、都市化が進んでいること。日本は、少子高齢化により人口が減少していますが、さいたま市はその中でも珍しい、今も人口が増加している地域です。田んぼは埋め立てられ、斜面林や屋敷林などの木々は伐採され、多くの住宅や商店、道路などに姿を変えています。

 

もう一つは、里山の生活様式が失われていること。かつては燃料を得るために柴刈りや薪などを採り、管理していた雑木林は、もっと便利な化石燃料を使う生活が拡がり、その管理の担い手はいなくなってしまいました。また、田んぼや畑には化学肥料などが使われるようになり、機械化などにともない、人にとってのみ、都合の良い形に姿が変えられていきました。

 

人々の様々な営みが「必然」で繋がっていた輪が途切れてしまった今、里山が再びその輝きを取り戻すためにはどんな方法があるか、今、もっともっと知恵を絞り、考えることが求められています。

 

 

 

やってみよう!行ってみよう!

 

・博物館や資料館などで、昔の人がどんな生活を送っていたか、調べてみよう。

・見沼田んぼなどで開かれている、稲作体験や自然観察、ハイキングなどのイベントや市民活動に参加してみよう。

・地域に残る、獅子舞や餅つき踊りなどのイベントには、どんな願いが込められていたか、調べてみよう。

・桜環境センターのビオトープが、どんな自然環境を目指しているか、調べてみよう。

・桜環境センター・さくらラボ、見沼見聞館、図書館などで、地域の生きものについて調べてみよう。